富士には、月見草がよく似合う
かつて太宰治が滞在した天下茶屋に行ってきました。雨に煙る日で、富士山は見えませんでしたが、太宰のこんな洒落た言葉に出会いました。 「ここから見た富士は、むかしから富士三景の一つにかぞえられているそうであるが、私はあまり好かなかった。まるで、風呂屋のペンキ画だ。芝居の書割だ。どうにも註文どおり景色で、私ははずかしくてならなかった。 3778メートルの富士の山と、立派に相対峙し、みじんもゆるがず、なんと言うか、金剛力草とでも言いたいくらい、けなげにすっくと立っていたあの月見草は、よかった。 富士には、月見草がよく似合う。」